uhlsport ウールシュポルト

小島伸幸氏特別インタビュー

1|次のページへ≫
元日本代表ゴールキーパー 小島伸幸氏 特別インタビュー TOPへ


メンタル的な部分のアドバイス



— 若く発展途上のGKのためにメンタル的な部分でのアドバイスをいただけますか。



小島氏:

メンタル的なことでいうと、いかに不安を一切なくしてピッチに入るかということが大事だと思います。そしてその不安をなくすために日々トレーニングするのです。選手はそれぞれ得手・不得手があるものですが、不得手のところは不安要素になりやすい。何か1つでも心配なことがあると、「シュートが飛んできたら嫌だな」と思ったりします。それは選手として一番だめですからね。どこかに不安があるためにキャッチできるボールを取りに行かず、それによってコーナーキックになって点をとられてしまったらもったいないです。ですから、不安なく試合ができるように厳しいトレーニングをしている、という意味合いはやはり強いと思います。
「これだけやったんだから後はしようがない」と開き直ってピッチに立てるかどうかというのは、非常に大きいかもしれないですね。そしてそこを克服できればもっと自信になります。
こういった一連のことが試合に向けてのメンタルや、どっしりと構えられる、おどおどしないというところでもとても重要なのかなと思います。
確かにトレーニングをすることは肉体的にはきついことですけれども、肉体的なきつさから得られる達成感もあります。簡単に克服してしまうようだったら達成感もないでしょうけれども、すごく苦労して克服したものがあれば、それはそれですごく自信になってくると思います。


— 確かに。

小島氏:

自分を追い込むというのはなかなか難しいかもしれないですけれども、少しでもそのように感じられると厳しい練習がポジティブに受けとめられるようになります。


— 練習をやらされている、という気持ちでやるのとでは、全然違ってくるでしょうね。

小島氏:

厳しい練習をやり遂げることで、チームメートの信頼を得られるという側面もあります。自分がやっている練習を見てほかのプレーヤーたちが「大変そうだな」と思う練習を人一倍こなすことによって信頼が得られるのであれば、きついと思うだけではなくて、そういうメリット、プラス部分を見いだして厳しい練習もできるものです。
「この練習をやることによって何々がうまくなる」とシンプルに思えたら選手としては一番の喜びを感じながら練習できるものでしょうが、このようにしていろいろな要素で自ら喜びを作り出しながら練習をするんです。スタミナ系のトレーニングはやはりきついですね。でも、これをやることによって相手に走り負けないと思ったらこれをやることの意味が分かってきて、それをやったあとの喜びとかやることの喜びが出てくる。それをきつい中でも、自分で少しでもプラスのほうに持っていける材料にしていかないといけません。
嫌だなと思いながらサッカーの練習をするのは自分の中でよくありませんし、プラスに思える選手が、最後にはどんな努力でも惜しまずできる選手になっていくのかなと思います。


— 「努力できることが才能」ですね。

小島氏:

どんなに才能のある選手でも、やはりプレーヤーとして続けている限りは常に成長していく自分がないと、どこかで満足してしまったら私のように引退ということを考えなければいけません。


— でも、小島さんは引退を考えたのは40歳ぐらいの時ですよね?

小島氏:

30何歳でも上手くなれるのですよ。
たしかに肉体的な能力は限界があると思うんですね。例えば、今まで80センチの垂直ジャンプができていたのが、40歳で1メートルに跳べと言われるとなかなかきついのですけれども、キャッチング技術を向上させたり、セービング時のファンブルを少なくするとか、構えを気にするだとか、よりボールに対して無駄の無い動作で行けるようにするといったことは、練習をすればするだけ向上していくので、向上できる部分を自分の中で探して克服していく。ボールを取るのか、取らないのかという判断というのも、ゲームの中でより安全にできるだろうし、そういったことは幾らでもうまくなっていく気がします。
でも全ては健全な体があってこそ、なのですよ。若い選手は体力の向上も望めるし、技術的な向上も望める。自分がどのぐらい望んで努力できるかで、どのぐらいの選手になれるかというのは自分で決められるので、うらやましいですね。


— もう一度若い頃に戻りたいという気持ちはありましたか?

小島氏:

ええ。現役最後の頃は「小さくてもいいから丈夫な体が欲しい」と思ったことがありましたね。背が小さかったとしても、背の大きい人と同じところまで同じ秒数で到達できるようになれば必ずしもマイナスとはなりませんからね。

— 判断と技術で補完する、と。

小島氏:

私は背伸びをすると2メートル44センチのバーに届きます。そこへ同じ時間で到達できるのであれば小さくても伸長差はないに等しい。横に行くのも私は手が長いので、すっと出すだけです。それでも10センチ、20センチの差で1メートルもあるわけではないですから、克服できないほどではない。同じ秒数でそこまで到達すればいい。そのためには人よりちょっと努力しなければいけないかもしれないですが。


— 自分の弱点を克服すればそれが長所になるんですね。


小島氏:

そういうふうに思わなかったら、背が小さい子はキーパーをやる気にもならないと思いますよ。私はたまたま体が大きかったけれども、小さい人で一流になろうと思ったらそこを突き詰めていけばいいと思います。究極に言えば垂直ジャンプで2メートル飛べてしまえば誰と競り合っても負けません。私は2メートル44センチから60センチは最低でも飛べますから、最高到達点はだいたい3メートル。170センチの選手が手を伸ばして2メートルに届くとしたら、1メートルを飛べるようになれば、その差はなくなるはずですよね。そういったことをいろいろ考えると意外に楽しいと思います。


— 目標を明確に定めて、それに合わせてステップしていく道筋をしっかり決めるのが重要なのですかね。

小島氏:

自分がどうで、何が弱いところで、どうすればいいのかを把握するのが大切ということです。
フィールドプレーヤーだったら小さい体を生かして、テクニックなどを磨けばいいですけれども、ゴールを守るゴールキーパーの場合、やる仕事はほとんど同じことが多いので、それをやるために自分の弱点はどこで、有利な点はどこか。有利な点は伸ばしつつ、弱点を消せればそれでいいわけです。
例えば先ほども言ったように大きい選手はちょっと緩慢で、小さい選手が俊敏に動けるというのであれば、跳躍力という武器を入れて伸ばしてしまえば大きさというところは縮められますよ。その代わり、それを手に入れようと思ったら相当な努力が必要なのだけれども、やる価値はあるということですよね。


— なるほど。誰にでも可能性があるように思えてきますね。

小島氏:

目標が代表とかになったら、それこそすごい努力をしなければならないのだけれども、何もしないであきらめるよりはいいではないですか。厳しい練習イコールいい選手になるということなので、そういう喜びを見いだせれば、自分の体がもって精神がもてばどんな選手にでもなれるということですよ。



2/5ページ:PKの時のメンタルへ




1|次のページへ≫
元日本代表ゴールキーパー 小島伸幸氏 特別インタビュー TOPへ